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「多賀山地は日本のルーツ」 茨城大学名誉教授/田切美智雄さん |
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田切美智雄さん |
一帯のジオパーク化目指す
日立市郷土博物館特別専門員であり、茨城大学名誉教授を務める田切美智雄さん(66)は、日立市と常陸太田市に広がる多賀山地の約3分の2の地層が日本最古の5億年前のカンブリア紀のものであることを発見した。「これだけ古い地層は日本には他にありません。このことにより、中国東北部と日本が5億年前につながっていたことが分かります。多賀山地は日本列島のルーツといえるでしょう」と目を輝かせる。「茨城には他にも五浦海岸や花貫渓谷など、魅力的な景観があります。これらが茨城県ジオパークとして認定されることを目指しています。全国から人々が訪れ、地域の活性化につながれば」と今後の抱負を語る。
田切さんは40年前からこの地帯の地質調査をしているが、かつては2億〜3億年前の地層だと認識していた。約10年前、とある大学の学者が小木津の一個の石を調査したところ、日本で一番古い、5億年前の石だということが判明する。田切さんも驚いた。
「そこで、本当かどうかを自分で確かめることにしました」
山を歩き、石の分布や古さを調査することから始めた。「茨城大学地球環境科学科の大学生や大学院生たち7人ぐらいと一緒に調査をしました。とにかく歩くことが大事で、道具はハンマー一つです」と地道な作業の大切さを話す。
「普通の山歩きだと帰りは食料や水がなくなり軽くなりますが、我々の山歩きは、帰りは5〜10キロの石を背負って重たくなります」と苦笑い。
石の古さは、肉眼では分からないため、機械で測定する。「石の中にあるジルコンで年代測定をします。持ち帰った石を細かく砕き、0.1ミリ〜0.05ミリのジルコンを針の先で探しだすのは、大変な手間と研究費が掛ります」。記者も現場へ行ってみたが、一見、なんてことない石にしか見えなかった。
調査は約10年続いた。多賀山地付近の地層は立っているので、掘っても同じ年代の石しか出てこなかった。ある時、地層の中に巨大な不整合があることを発見。「この時は興奮しました」と笑顔で振り返る。
そしてついに、十王川から南に石尊山、神峰山、高鈴山、真弓山のすぐ西までの広さ約60平方キロメートル(多賀山地全体の約3分の2)が、5億年前のカンブリア紀の地層であることを突き止めた。国内最古の地層だ。
中国東北部、ウラジオストックやナホトカ周辺にも5億年前の地層がある。「つまり、当時の日本列島は、中国東北部とつながっていたのですね」。その後大陸が割れて日本海ができ、日本列島が形作られていった。多賀山地に日本列島のルーツを物語る要素があることは間違いない。
田切さんは、多賀山地だけでなく、五浦海岸や高戸海岸、花貫渓谷、袋田、常陸太田市、ひたちなか市がジオパークとして認定されることを目指している。ジオパークとは、生態系や人間との生活を考える公園で、国内には14地域の日本ジオパークがあり、その内、洞爺湖有珠山や島原半島など4地域が世界ジオパークとして認められている。
「ジオパークとして認められることで全国から多くの人たちに来ていただき、日立市を活性化したい。現在、多賀山地に関する歴史と文化と地質をご案内しています。また、ガイドの養成も講習会を開き行っています」
問い合わせは日立市郷土博物館 TEL.0294・23・3231
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